気候変動への対応
気候変動問題に対する当社認識
2015年のパリ協定以降、気候変動問題は地球規模の喫緊の課題であり、環境問題への取り組みの必要性は世界各国の共通認識となっています。気候システム全般にわたる最近の変化の規模と、気候システムの多くの側面における現在の状態は、数百年から数千年の間、前例のなかったものとなっています。2021年に公表されたIPCC第6次評価報告書では、人為起源の気候変動は、世界中の全ての地域で、多くの気象や気候の極端現象に既に影響を及ぼしていること、向こう数十年の間に温室効果ガスの排出を大幅に減少しない限り自然災害の激甚化や頻発化などを引き起こすことが警告されており、21世紀中に世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃さらには1.5℃未満に抑えることが求められています。世界各国で温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みが進められており、日本においても、日本政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」以降、脱炭素社会実現に向けた動きが加速しています。
このような中、トーセイグループは、気候変動問題は自然環境と社会構造に劇的変化をもたらし、当社の経営とビジネスに重大な影響を与える課題であると認識し、自然災害による不動産価値の低下や政府の環境規制強化等により、当社グループの事業活動や戦略、財務計画に大きな影響を与える可能性があると考えています。トーセイは、トーセイグループESG方針・行動指針を定め、現中期経営計画『Further Evolution 2026』においても環境・社会的課題への取り組みを掲げています。引き続き、サステナビリティに配慮したESG経営の実践に努め、企業活動を通じた持続可能な社会の実現および脱炭素社会の形成への貢献を目指してまいります。
トーセイグループは、グローバルな発想を持つ心豊かなプロフェッショナル集団として、あらゆる不動産シーンにおいて新たな価値と感動を創造することを存在意義としており、環境(Environment)・社会 (Social)・企業統治(Governance)を経営の重要事項と認識し、不動産にかかわる社会的課題に真摯に取り組むことで社会に貢献するとともに、グループの持続的な成長を目指してまいります。
TCFD提言への賛同
当社は2021年11月に「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」への賛同を表明するとともに、国内賛同企業による組織である「TCFDコンソーシアム」に加入しています。TCFD提言に基づいて気候変動が事業にもたらすリスクと機会を分析し、より一層の情報開示の充実に努めます。
注:TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、2023年10月12日にその任務を終えて解散し、企業の気候関連開示の進捗状況の監督機能は、国際財務報告基準の策定を担うIFRS財団に引継がれています。
目標と実績
GHG(CO2)排出量目標
- 長期目標
- 2050年度ネットゼロ
- 中期目標
- 2030年度までに基準年比50%削減
- 対象
- トーセイグループのScope1・2
- 基準年
- 2022年度
GHG(CO2)排出量実績
スクロール
項目[単位] | 2022年度実績 (基準年) |
2030年度目標 (目標年) |
2021年度実績 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | |
---|---|---|---|---|---|---|
GHG(CO2) 排出量 [t-CO2] |
Scope1 | 480 | - | 197 | 480 | 584 |
Scope2 | 3,289 | - | 1,696 | 3,289 | 2,714 | |
Scope1+ Scope2合計 |
3,769 | 1,885 | 1,893 | 3,769 | 3,297 | |
基準年比較削減率 (Scope1+Scope2合計) |
- | -50% | - | - | -13% | |
対象範囲の延床面積[㎡] | 61,561 | - | 49,112 | 61,561 | 73,722 |
-
※
-
※2021年度の数値は、2021年10月に連結子会社となったプリンセスグループについて、算入対象外としています。
-
※当社グループではCO2以外のGHG(フロンガス等)は極めて微量のため除外し、CO2のみを算定・報告しています。
-
※GHG排出係数は環境省・経済産業省公表「電気事業者別排出係数」に基づき、対象ビルが使用している電気事業者の排出係数を使用しています。
-
※2023年11月30日時点
エネルギー使用量目標
- 目標
- エネルギー使用量原単位(原油換算kl/㎡)を前年度より1%削減
- 対象範囲
- トーセイグループ※
-
※トーセイグループ:トーセイ保有固定資産のうち実質的にエネルギー管理権原を有する不動産ポートフォリオ
- 長期目標
- 2023年度までにエネルギー使用量原単位を5%削減
- 短期目標
- エネルギー使用量原単位を1年間で1%削減
- 対象範囲
- トーセイ保有の固定資産
- 基準年
- 2018年度
エネルギー使用実績
スクロール
項目[単位] | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
エネルギー使用量 | 総量 [千GJ] |
126 | 137 | 132 | 146 | 175 | 177 |
使用量原単位 [GJ/㎡] |
1.78 | 1.46 | 1.41 | 1.23 | 1.25 | 1.26 | |
基準年比較削減率(使用量原単位) | - | -18% | -21% | -31% | -30% | -29% | |
対象範囲の延床面積[㎡] | 70,664 | 93,957 | 93,957 | 117,982 | 140,002 | 141,306 |
-
※対象範囲はトーセイ保有の固定資産です。なお、データ取得が1年に満たない物件・区分所有物・販売用不動産は除きます。
-
※床面積原単位の計算において、入居率は考慮していません。
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※基準年は2023年度までの旧目標における基準年(2018年度)です。現目標において基準年はございません。
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※2023年11月30日時点
主な取り組み
不動産再生ビジネスによるCO2排出量削減
- 再生
当社グループの主力事業である「不動産再生」は、既存不動産を活かすことで資源の保全につながり、CO2排出量削減にも貢献しています。
例えば、既存建物を建て替えずに100年活用することで、Scrap and Buildモデルと比較してTOSEI Value - Upモデルは工事で発生するCO2排出量を約54%も削減できます。(当社試算による)
新築したオフィスビル(延床面積10,000㎡、鉄骨鉄筋コンクリート造)を100年間(※1)維持することを想定
- TOSEI Value - Up モデル
- 10年ごとに修繕工事(計8回)、30~40年に1回 長寿命化工事(計2回)実施
長寿命化工事とは、空調や水回り、エレベーターの整備、節水トイレ設置等を想定した大規模修繕工事 - Scrap and Build モデル
- 10年ごとに修繕工事(計9回)、30~40年に1回 既存建物を解体し、同様の建物を新築(計2回)
-
※1100年間までの躯体延命にあたっては、躯体の中性化診断とその処置が対応できているものとする。また、中性化診断とその処置に係る工事のCO2排出量は考慮していない。
持続する価値の創造 ~3つのValue Up Code~
- 再生
- 開発
新築およびバリューアップの商品企画時には、物件の特性に合わせて環境配慮型設備の採用を検討し、省エネルギー、省資源などさまざまな観点から環境商品を積極的に導入しています。
特に中古不動産を取得後にバリューアップを行う際は、「WELL BEING(洗練&快適)」、「ECO FRIENDLY(エコロジー&リサイクル)」、「RESILIENCE(安心&安全)」からなる「3つのValue Up Code」を踏まえ、持続可能な省エネ、省コスト、省資源につながる設備仕様の採用を検討しています。
トーセイでは、あらゆる既存物件の個性を生かし、
魅力を高めるため、3つのコードを取り入れた再生に取り組んでいます。
再生可能エネルギーの活用
- 再生
- 開発
- 賃貸
- ファンド
- ホテル
保有ビルのCO2排出量削減に向けて、省エネルギー改修工事に加え、再生可能エネルギーの使用(※)に取り組んでいます。
トーセイの本社ビルである田町トーセイビルやトーセイホテル ココネ築地銀座プレミアにおいて再生可能エネルギー電力を導入しているほか、当社の再生事業における再生可能エネルギー活用として、T's eco川崎においてバリューアップ工事の一環として太陽光パネルおよび蓄電池を搭載し、共用部の一部電力を賄う等エネルギーの地産地消にも取り組んでいます。
-
※再生可能エネルギー由来の電力には、再生可能エネルギーに分類される非化石証書の活用を含みます。
不動産ファンド・コンサルティング事業におけるGHG排出量削減への取り組み
- ファンド
不動産ファンド・コンサルティング事業では、アセットマネジメント業務を通じて、不動産私募ファンドやREITが保有する建物の省エネ改修や環境不動産認証の取得、GHG排出量削減に向けた取り組みを推進しています。
2023年11月期は、トーセイ・アセット・アドバイザーズが国内機関投資家と協働し、省エネ改修により建物1棟全体におけるGHG排出量の削減を目指す「Green ×Value Up レジファンド」(以下、本ファンド)を立ち上げました。本ファンドは、中古の賃貸マンションを長期的に保有し、共用部および、空室になった住戸から順次省エネ改修を施し、建物1棟全体のGHG排出量について、従前からの大幅な削減を目指して運用を行います。改修工事はトーセイがコンストラクションマネージャーとして、環境負荷軽減に焦点をあてたバリューアップを行い、脱炭素社会の実現に寄与する賃貸マンションとして再生します。具体的には、共用部は照明のLED化や人感センサーの導入のほか、屋上への太陽光発電設備の導入および高反射塗料の塗布等を予定しています。また、専有部では照明やエアコンなどを節電型に変更し、使用エネルギーの見える化および最適化を可能とするHEMS(Home EnergyManagement System)を導入しています。
耐震・環境不動産形成促進事業に参画
- ファンド
トーセイ・アセット・アドバイザーズは、2013年に国土交通省と環境省が推進する耐震・環境不動産形成促進事業において、一般社団法人環境不動産普及促進機構(Re-Seed機構)が運営する第1号案件のファンド・マネージャーに選定されました。さらに、2014年、2017年にも、新ファンドを組成しました。
脱炭素・低炭素物件の開発
- 開発
当社グループは、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)基準を満たす住宅の開発に取り組んでおり、2023年11月期はZEHおよび長期優良住宅を12棟供給しました。太陽光発電や省エネ・節水設備、IOTをはじめとする最先端の住宅設備・システムを導入した商品開発を行っています。今後もこれらの取り組みを継続し、高い省エネ性能と快適性を兼ね備えた居住環境を提供してまいります。
主な環境配慮型設備導入実績
- 開発
当社グループの開発物件では、下記の通り、温室効果ガス削減や省エネルギーに資する設備・資材を積極的に採用しています。
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省エネ型給湯器(エコジョーズ・エネファーム)
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複層ガラス
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LED照明、人感センサー照明
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高断熱設計(断熱等性能等級4相当)
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高断熱サッシ
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太陽光発電システム
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雨水利用設備(雨水タンク、保水性インターロッキング)
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節水型水栓、節水トイレ
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リサイクル素材
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屋上緑化・屋上菜園・庭園
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電気自動車充電設備
中古オフィスビルの全館LED工事の推進
- 賃貸
- 管理
当社グループは、保有する固定資産へのLED照明の導入を推進しています。これまでに、中古オフィスおよび中古物流倉庫11物件において全館LED照明導入の工事を実施し、平均約20~30%電気使用量を削減しました。電気使用量とコストの削減のほか、照度の改善やメンテナンスの手間も省けることから、テナント満足度向上も期待されます。
テナントアンケート
- 賃貸
- 管理
当社が保有するビル(固定資産)に入居する全テナントに対し、ビルの管理運営体制や設備等に関するアンケートを毎年実施し、ニーズの把握に努め、固定資産の管理を担うトーセイ・コミュニティのサステナビリティ委員会およびトーセイのサステナビリティ委員会においてアンケート結果を確認の上、必要な対応策を講じ、テナント満足の向上に取り組んでいます。
グリーンリース契約
- 賃貸
- 管理
全館LED工事を実施したビルのテナントに対して、省エネ設備導入による節電メリットをオーナー、テナント双方にて享受するグリーンリース料の設定のほか、物件の環境パフォーマンス向上の資するさまざまな省エネ活動にオーナーと協働して取り組む意向を定めるグリーンリース契約を締結しています。2023年11月期末時点で新田倉庫、淡路町トーセイビル等をはじめとする8物件でグリーンリース契約を実施しています。
省エネ啓発活動
- 賃貸
- 管理
省エネルギー活動のポイント等を示したサステナビリティ・ガイドの配布、省エネ・省資源、ごみの分別、階段利用の促進等を啓発するポスター掲示などを通じて、ビル利用者の省エネ意識向上とエネルギー使用量の抑制に努めています。
環境不動産認証取得の推進
- 賃貸
- 管理
当社グループは全館LED照明導入などをはじめとする省エネルギー改修を推進しています。また、「BELS」や「DBJ Green Building認証」など、不動産の環境性能や社会性を評価する外部認証の取得を推進し、保有資産の価値向上、テナントリーシングに活用しています。
社内の省資源、省エネルギーに向けた取り組み
社内のITインフラを整備することで、会議資料や決裁書等のペーパレス化が進んでいます。その他、エアコンに頼らず、扇風機やハロゲンヒーターも併用するなど、地道な活動を継続しています。また、節水トイレや人感センサー照明など、省資源、省エネにつながる設備も積極的に導入しています。省資源、省エネの推進については、年間を通じた継続的な取り組みが重要と考え、社員一人ひとりが実施できる身近なエコ活動を引き続き啓発、実施してまいります。